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第四回 着物業界が危ない!? 日本の着物事情と行く末

今年3月の最終査定に見事合格し、着付け師の資格を取った先生の1人に

両親が京都で呉服屋を営んでいる女性がいる。

彼女が中学生の時、クラス全員40名近くのうち

1人を除いてすべての生徒の両親が着物関係のビジネスをしていたという。

そのクラスがたまたまと言う訳ではない、京都の小・中学校では普通のことなのである。

それほど京都では着物事業が盛んで、需要があったということだ。

 

現在では、かなりのお知り合いの方がお店を畳んでしまい

着物業界の危機を感じずにはいられない、と実家のお店を心配していた。

実際、着物関係者に話を伺うと、経費を少しでも抑えるため 「着物の裁縫 (ミシン縫い) 」 や 「

帯締めの組み」 を数年前から中国に委託する業者がほとんどらしい。

そう言えば、素材の良いポリエステルで出来た 「洗える着物」 に 「Made in China」 のタグを見つけ

違和感を覚えたのを思い出した。

日本伝統工芸の代表 「着物」 がお隣の中国で製造され、日本で売られている。

古い着物ファン (笑) には、とても悲しい現実である。

だが、反物から制作する正絹 (シルク) の着物や手縫いの仕立て、ものが良い小物類は

熟練した職人さんの手仕事が必要不可欠である。

所謂高級品は、変わらず 「Made in Japan」 の品質を保っている。

良く言い換えると、文化的な価値と値段、需要に応じて分業化されたことになる。

これも時代に応じた変化だが、着物文化の衰退を表しているかのようで心寂しくなるのは私だけであろうか。

 

これ以上の分業化が進むことで懸念されるのは、熟練技術の継承である。

「着物文化存続の危機」 と言っても過言ではない。

前回のコラムでご紹介したが、着物を作るためには10以上の過程があり

それぞれの行程で高い特殊技術が使われている。

そのため着物1枚、100万円以上するものもざらにある。

その技術を次世代に伝え、継承していくことで、着物文化が守られていく。

需要が減り、コスト削減が要求され続ければ、

もしかしたら100年後には職人さんがいなくなってしまうかもしれない。

冒頭に紹介したエピソードを参考にしても、需要の変化に伴う 「跡取り問題」 は深刻である。

 

成人式で艶やかな振り袖を着る、と言う習慣は無くならないと信じたいが

流行り廃りの早い現代では今のうちに手を打つ必要がある。

大げさに言うと、この時代に生きている私たちが、着物文化存続の最後のチャンスかもしれない。

それぐらいの使命感を持って臨みたいものである。

 

100年後も今と同じように、たまには街中で着物姿を目にする日本であってほしい。

 

2012年2月 ロサンゼルス情報ウェブサイト”びびなび“ に掲載

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