KIMONO AGENCY

第七回 「着付ける」 ということ

私はいつも1つのアート作品を作り上げる感覚で、着付けに臨んでいます。

モデルさんの顔に1番合ったカラーコーディネートと着物のデザイン、

その時のT.P.O等を考えながら、着物と帯と小物を選んでいきます。

モデルさんの年齢や体型は実に様々なので、同じサイズの着物でもモデルさんに合わせて着付けで対応します。

又、着物の格やデザイン、T.P.Oに合わせ着付けを微妙に変えます。

衿の抜き加減や半衿の出し具合、おはしよりの処理の仕方などが少し違うだけで、見た目の印象がガラッと変わります。

モデルさんをどう表現するかは、着付け師次第なのです。

 

ファッション誌の撮影では、今までにはない着付けセンスが求められます。

以前 VOGUE Japan の撮影で、その年のパリコレクションで使用したハイブランドの洋服と

着物や帯を合わせてハイファッション風の新しいスタイルを作りました。

実際に掲載された以下の写真をご覧下さい。

 

 

 

 

 

今までに学んだいろいろな感性をミックスして、1つの作品をつくりあげていきます。

ここまでくると、「着付けはアート」 です。

 

着付けの魅力

私にとっての着付けの魅力は、着付ける相手、つまりお客様やモデルさんを

自分の技術で綺麗にしてあげられることです。

メイクアップアーティストさん達と似たような感覚です。

「美」 とは着付けも含めたトータルバランスも重要なので、

着付けをするお客様には必ずヘア&メイクアップをプロにお願いするように、お勧めしています。

折角着物をお召しになるのに、もったいないと感じるからです。

多少お金は掛かりますが、やはりプロは違います。 皆さんを別人に変身させます。

「顔・髪・装い」 が揃うと、より一層お客様を美しく輝かせることができます。

 

当たり前のことですが、着物・着付けは世界中で日本にしかありません。

言い換えると、着物が世界中でもっと愛され海外での着物需要が増加すれば

着物業界の色んな意味での活性化にも大きく繋がります。

 

今年10月7日 (日) にアラスカ州のアンカレッジ大学 (UAA) で

着物レクチャーと着付けデモンストレーション、きものファッションショーを行ってきました。

この大学では日本語教育が盛んで、毎年英語教師として日本を訪れる生徒さんもいます。

事前ミーティングをしているとき、着物販売もしてほしいと担当の教授から要望がありました。

着物が大好きな生徒がいても、着方も分からず、売っているところもないそうです。

もし、世界中の人が着物の素晴らしさを知ったら、おもしろいと思いませんか?

 

「心」 で着付ける

私は弟子にいつも 「お客様を心で着付けなさい。」 とアドバイスをします。

 着物のデザインは1枚1枚違いますが、形はすべて同じです。

特に着物は洋服と違い、畳むと平面になるように作られています。

その平面をモデルさんの体型 (立体) に合わせて、デザインしていく。

これが着付け師の仕事であり、1つの作品を作る楽しさでもあります。

ただ着物を着付けるのではなく、心からのおもてなしで心地良さと感動を与え、

その人のキャラクターを活かした着付けで、持っている 「美」 を最大限に引き出す。

それが 「心で着付ける」 ということです。

 

「着付けは新しい文化」

400年以上前から日本人は着物を毎日着てきました。

その当時、庶民の間では着付けに関する決まりや、しきたりは特にありませんでした。

この時はまだ文化としての着付けは確立されていません。

みんな当たり前のように、毎日着物を着ていたからです。

それが明治に入ると洋服が流行し、戦後には着物離れが叫ばれるようになりました。

そこで 「着付け」 を新しい 道 *  と捉え、日本の伝統文化と美の象徴として残そうと

数々の着付け教室、学校、流派が生まれました。

私が尊敬する初代宗家・山野愛子さんは、昭和22年 (西暦1947年) に山野流着装教室を立ち上げました。

先に挙げた 「顔・髪・装い」 に 「精神美・健康美」 を加えたものを 「美道五大原則」 として提唱しました。

 

 世界の中で、自国の民族服の着用の仕方を教えるための学校が全国に多数存在し

かつ着付けを教える人に資格を与えるという国は日本だけです。

 

「着付けは日本の現代文化」 です。

 

* 茶道、華道と同じように流派を作り広めていくこと

 

自分で着る楽しみ

お茶やお花と同じように、着物や帯・小物のコーディネート、T.P.Oを考えながら、自分で着れる喜びに浸る。

又、着物に慣れてくると自分なりの着方を見つけ、楽しめるようになります。

こうなると着物を着るのがもっともっと楽しくなります。

いかに自分を自分らしく表現するか、それも魅力の1つです。

以前掲載したコラム 「着物の魅力 」でもご紹介しましたが、着物は 「身にまとえるアート」 です。

また今回のコラムで 「着付けは文化」 とお伝えしました。

日本の素晴らしい芸術作品と伝統文化を一緒に楽しめるのも、着物を着付ける1つの醍醐味です。

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